盛本牧場を経営しているのは盛本和喜さん。
兵庫県では数少ない、自ら人工授精を行い、繁殖から肥育を一貫で行っている生産者だ。
「優秀な成績を出した母牛から、生まれた姉妹のメス牛を次の母牛としていく。そうすることで優秀な血を次の世代へ繋げることができる。」そう、盛本さんは熱く語る。
盛本牧場では子牛は生後5か月までを母牛と共に過ごし、変わらない環境のまま大きくなっていく。きれいな牛舎で母牛と共に育つ子牛は、ストレスとは無縁のようでとても伸び伸びと育っていた。
盛本さんが牧場を継いだのは40歳の時。
24歳から精肉店を営んでいたが、父の他界を機に父の行っていた牧場事業を引き継いだ。
当時は九州の牛を肥育していたが、「兵庫県なら神戸ビーフを」との思いが強くなり、周囲の反対を押し切って但馬牛の肥育を開始した。
また、「肥育だけではなく繁殖も」と思い立つと、すぐに家畜人工授精師の免許を取得。
徐々に九州牛を但馬牛へ切り替えていくと共に、但馬牛の繁殖事業も開始した。
「こんなに美味しい神戸ビーフは、絶対に海外でも必要とされる。神戸ビーフが大々的に輸出される時代が必ず来る!」
盛本さんの予感は大いに当たり、2012年のマカオへの輸出を皮切りに、世界各国への神戸ビーフの輸出が開始。今も需要が増え続けている事を鑑みると、先見の明があったのだと言える。
現在100頭の繁殖、200頭の肥育を行う盛本牧場。
肥育している牛達の状態を管理すると共に、出産を控えた母牛、産まれたばかりの子牛の世話をしていくのは並大抵の事ではない。
それでも盛本さんは、常に笑顔で仕事を「楽しい」と話す。
「世界へ目を向けた仕事へシフトしていきたい」
但馬牛を繁殖し始めた頃の盛本さんの想いは、今まさに実を結ぼうとしている。